「ちょい人気者」とは
「人気者は少数。ただ、みんなそれぞれに少しずつのファンがいる。」というものです(ロングテールの法則)。
学校のクラスでも、みんなが好きな人気者はクラスに1人か2人だったはずです。
しかし、その他大勢でも、好きになってくれた人はゼロではなかったはずです。
そして、人気者ほどの人気はないのだけど、ちょっとだけ人気のある「ちょい人気者」な人たちがいたはずです。
多くのスモールビジネス事業者が目指すのは、この「ちょい人気者」です。
すごい人気者には簡単になれませんが、頑張ればちょい人気者になれるということです。

ただ、「ちょい人気者」なら簡単になれるというわけではなく、地道に一生懸命頑張って、やっとこのポジションにいけるという感覚です。
でも、頑張れば少しは収益があげられると考えることができれば、少し気持ちが楽ではないですか?
なぜ「ちょい人気者」がスモールビジネスで重要か
「ちょい人気者」は、ニッチな世界で人気です。
ニッチな世界で人気とはどういうことなのでしょうか。
一例として、宅建講座の講師業を営んでいるAさんとBさんの例を挙げてみます。
- Aさんの状況
- 55歳男性
- 地方の中核都市に在住
- セカンドキャリアを考えて、副業として開業
- 宅建は30年前に取得
- 不動産会社勤務の会社員で、経験豊富
- 駅徒歩5分のレンタル会議室を利用して、週末に集中的に講義
- 長年の業務経験を活かして、より実践的に指導
- テキストはオリジナル
- ターゲットは全年齢だが、主に中高年男性をイメージ
- Bさんの状況
- 43歳女性
- 東京多摩地区に在住
- 2児のママ
- 宅建は3年前に取得
- 家庭のことも考え、一昨年に独立
- 講義はオンライン動画で、学習はLINEでサポート
- テキストは市販のものだが、アプリでも勉強できるようにしている
- ターゲットは20代~30代の女性に絞っており、女性専用
Aさんは、実直で真面目そうな講師です。
会議室まで行かなければいけませんが、徒歩5分と近いので、近隣の人であればあまり問題ではなさそうです。
指導という言葉を使っていることもあり、いかにも先生っぽい感じです。
ただ、長年、不動産会社に勤めているので、より専門的な知識もあり、丁寧に教えてくれそうです。
専門的なことまでしっかり勉強したい人に人気がありそうです。
Bさんは、いかにもバリキャリな女性で、講座のターゲットも女性に絞っています。
子育てで忙しい受講生にとっては、先輩ママとして頼れる部分もありそうです。
動画ではあるものの、学習サポートもしますし、アプリでの学習環境も用意しています。
講師ではあるものの、親身になって、勉強も応援してくれそうです。
一緒になって頑張ってくれる先生が良いひとに人気がありそうです。
さて、この2人が受講生募集の広告を出すことにしました。
次の2つを見て、どう感じますか?
■Aさんの広告
「週末に集中して開講する宅建講座。不動産会社勤務30年のベテラン講師がオリジナルテキストを使って、実践的に指導します。駅徒歩5分。昨年の合格率は80%。」
■Bさんの広告
「女性専用の宅建講座。2児のママが親身に教えます。オンライン講座で、いつでもLINEでサポート。学習アプリでいつでもどこでも勉強できます。昨年の合格率は80%。」
同じ宅建の講座で、合格率も一緒なのに、カラーが違いますよね?
これは、どちらが良いか悪いかではなく、どっちもオリジナリティ(独自性)があるということです。
このオリジナリティこそが、ちょい人気者の源泉です。
2人は、まったく違う人たちに人気があります。
それは、オリジナリティを前面に押し出していることで、皆に人気があるわけではないけど、特定の層に人気があるからです。
オリジナリティがあると目立つ
スモールビジネスを含めたビジネスの世界はどこも競争が激しい環境です。
誰もが目立とうとして、前に出ようとしています。
その中で、特別な能力のない普通の人が目立つにはどうすればよいかを考える必要があります。
その解決策のひとつが、「ちょい人気者」になるということです。
ちょい人気者は、みんなの人気者ではありません。
メディアに出てくる方のような派手さはないですし、露出が増えるということもあまりないです。
しかし、特定のコアな人たちや、ごくごくローカルな人たちにだけ人気があります。
たとえば、先ほどのAさんは、近隣エリアで同年代のまじめなおじさん達には結構な人気が出そうです。
Bさんは、自分もバリバリやりたい独立心旺盛な女性に人気がありそうです。
おそらく2人とも自分の周囲の小さなビジネス圏では人気です。
テレビに出演したり、ベストセラーになるような本を出版したりするのは、なかなか難しいはずですが、小さなビジネスとしては成り立っています。
それは、ニッチな領域に限れば、他の人とは違ったオリジナリティがあり、目立つからです。
- Aさんのオリジナリティ
- 地方の中核都市在住×30年の経験×セカンドキャリアに積極的
- Bさんのオリジナリティ
- 多摩地区在住×2児のママ×アプリで学習可能
たしかに、全国を見渡せばこのような人は数多くいます。
しかし、ローカルで身近な範囲に限れば、そう多くはありません。
小さなビジネスとしてやっていくのであれば、それで十分ということです。
小さなビジネスは、日本全国の人たちを相手に商売する必要ありません。
商売にもよりますが、太客が30人もいたら、そこそこ成功している状態です。
つまり、日本人1億人のうちの30人を相手にすればよいということです(なんと、0.00003%です)。
大儲けをしようとすると、1億人を相手にしなければいけません。
でも、それができるのは、ごく一部の限られたひとたちだけです。
普通の人がそれを狙っても、目も当てられないことになるだけです。
オリジナリティが顧客との深い関係性を構築する
Aさん、Bさんに共通する特徴として、人口密集エリアではないことがあります。
スモールビジネスにおいては、地域を限定すること(ローカル化)は非常に重要なポイントです。
東京中心部でビジネスを行うのと、それ以外のエリアでビジネスを行うのでは難易度が違います。
ローカル化はなぜ有効なのでしょうか。
それは、周りに競合が少なくなることと、顧客との関係性を構築しやすいことが挙げられます。
簡単に言ってしまえば、「駅前にある昔ながらの定食屋さんは、格別に美味しいというほどではないけど、地元民に愛され、長く続いていることが多い」というような状態です。
たぶん、なじみの客がちょこちょこ訪れているだけで、新規のお客さんがたくさん来ることはないでしょう。
でも、それなりにビジネスとして成り立っているということです。
(近年は、事業承継やチェーン店の増加など色々な問題もありますが)
その要因は、つまるところは同じようなお店が周りに少ない(オリジナリティがある)ということです。
すごく美味しいというわけではない、きれいなお店というわけでもない、有名なわけでもない。
でも、周囲に他のお店が少なく、なにより悪い人たちがやっているお店ではない。
この辺の要素が絡み合って、そこそこのなじみ客がついているということです。
そして、なじみ客がつくと、定期的に商品が売れ、安定的な収益が出るようになります。
そのため、オリジナリティがあるということは、顧客との関係性を深める要因となるため、スモールビジネスにおいて非常に重要です。
「ちょい人気者」になるためのファーストステップ
ちょい人気者になるためのファーストステップは次の通りです。
- ターゲットとニーズをイメージする
- 自分のオリジナリティを洗い出す
- 両者がうまくかみ合うポイントを考える
ターゲットとニーズをイメージする
ターゲットとは、相手にするお客さんは誰かを決める、ということです。
ビジネスの半分はこのターゲットを誰に設定するかによって決まります。
Aさんは同年代の男性、Bさんは若い女性がターゲットでした。
ターゲットはビジネスによって千差万別ですし、まずはざっくりとでもよいので、イメージをしておくことが大切です。
今、がっちり決める必要はないです。
まずは、どんな人がお客さんになってくれそうか、あれやこれやと考えてみるのが良いです。
また、ビジネスを進めていくうちにターゲットが変化することもあります。
■Aさんのターゲットの変化
最初は同年代の男性をターゲットにしていましたが、しだいにご年配の方からもお問い合わせがくるようになりました。
どうやら、生涯学習の一環として学びたいという方がいるみたいです。
そのため、ご年配の方が受講しやすいように、会場を調整したり、テキストの文字を大きく見やすいものにしました。
■Bさんのターゲットの変化
当初は20代~30代の女性をターゲットにしていましたが、10代の女性からもお申し込みがありました。
将来を見据えて、若いうちから学びたいという方がいるようです。
若い方向けに、アプリの機能を強化し、受講生同士がやり取りできる仕組みも導入しました。
このようにして、ターゲットの変化にともなって、ビジネスも常に変化していきます。
ここでは、ターゲットのニーズ(欲しいもの、望んでいるものがある)も非常に重要です。
ターゲットがお金を出しても欲しいものがある、事業者がそれを提供する、だから商売が成り立つ。
昔から行われてきた商売の原則です。
ターゲットをイメージし、「その人たちが何であればお金を払ってもよいと考えるか」をじっくり考えてみるのが良いです。
自分のオリジナリティを考える
次に、自分のオリジナリティを考えます。
これはとにかく書き出すことです。
ありとあらゆる自分の特徴を書き出します。
とにかく自分を知ることが大切です。
たとえば、まずは年齢、性別、趣味、経歴、家庭環境、住所、志向などを考えてみます。
考える際の手法として、デモグラフィック、サイコグラフィックという考え方があります。
これは、本来マーケティングの思考法ですが、自分の整理にも使えます。
- デモグラフィック
- 年齢
- 性別
- 職業
- 学歴
- 所得
- 家族構成
- 居住地
- サイコグラフィック
- 価値観
- 性格
- 志向
- ライフスタイル
また、自己分析に関する書籍もたくさん出ています。
そういった本を使ってみるのもありです。
まずは、自分がどんな人間なのかを知ることが大切です。
ターゲット×ニーズ×オリジナリティ
最後に、ターゲットとニーズとオリジナリティがうまくかみ合うポイントを探します。
かみ合ったポイントがビジネスになる場所です。
ただ、これがなかなか難しいです。
まずは、世の中の色々な物事に目を向けてみることが大切です。
意外なところにヒントが隠れていたりします。
また、多くのビジネス事例にふれてみるのも参考になります。
世の中には、大なり小なり様々なビジネスであふれています。
参考になる例はたくさんあります。
また、必ずしも、同じビジネスだからダメ、誰もやったことのないビジネスを探さなければいけないわけではありません。
これだけ多くのビジネスがあれば、誰も考えたことのないものなどありません。
ただ、何かがかけ合わさると、ほとんど競合がいないビジネスになりえます。
先ほどのAさん、Bさんも同様です。
宅建講座は世の中にたくさん存在します。
リーズナブルな講座から、充実したサポートのある高額講座まで、ありとあらゆる講座が開講されています。
まったく新しい講座をつくろうとしても難しいです。
しかし、いくつものオリジナル要素がかけ合わされば、ニッチな領域では、唯一無二の存在になれる可能性があります。
AさんもBさんも、宅建講座と自分の特徴をかけ合わせることで、自分の周囲では競合のいない状況をつくり出せました。
要は、ちょい人気者です。
- ターゲットとニーズをイメージする
- 自分のオリジナリティを洗い出す
- 両者がうまくかみ合うポイントを考える
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